ARCHIVES-2014

建築とアートの横断 – 個の恊働による独創的関係性が生まれる空間の提案 –

本年の設計計画Ⅳでは、「個の恊働による、独創的関係性が生まれる空間の提案」と題して、課題を設けました。この課題の大きな特徴としては題名にあるように、個人の表現やその内発的な動機を発端としながらも、他者との関係の中から、新たな表現を紡ぎだしてゆこうとするものです。

つまりこの課題では、明確なゴール地点・アウトプットの形式や方法も含めて、その全てを、課題を進めていく中の関係性によって決定していこうというものです。

 

まず始めに取り組んだのは、「一日一作品制作」と題し、12日間、毎日一人一作品をつくりだすというものです。この課題では、一つ一つの作品もさることながら、全てを俯瞰してみた時に、自己の興味の対象や制作の方法論、制作に対する内発的な動機を、見いだしていくことに主眼を置きました。更にこの課題を展開して、コース内のメンバー間で、他のメンバーになりきって作品をつくるということも行いました。これによって主観と客観の両側面から、自己を掘り下げていくことになります。

こうした課題の中から、彼女達自身に共通的にみられる制作への動機として「視覚に対する疑いや興味」といったものが顕在化してきました。もちろん「視覚」と いうキーワードは特別なものでもありませんが、むしろその点においてこそ、今という時代における普遍的なテーマとして、今回の恊働における最適なものと捉えました。

 

更に、このテーマに沿った恊働作業の対象場所としてムサビ学内をリサーチし、最終的には図書館と美術館の間にある「通路」を設定しました。「通路」という連続性をもった空間に寄り添いながら表現を行うことで、メンバー5人による多角的な表現が独立するだけでなく、相互に関係しあうことの中から、ゆるやかに一つの連なりを持った、「視覚」に対する物語的空間の創出を試みたわけです。

 

5人の表現がこの通路を構成する様々な要素と関わりを持ち、存在することで、 既存の単なる通路でもなく、展示を行うための通路でもない、より多義性に溢れた空間へと変容するきっかけにも成り得たのではないでしょうか。